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一瞬、その場が静まりかえり、沈黙が落ちる。
背後には面白そうに高見の見物を決め込む橘、そして目の前には愉しげにじっと俺の反応を見る水城。
……さて、どう誤魔化すか……。
俺はバレないように微かに息をのみ、口を開いた。
「きっ…急に何するんですかっ!僕が偶然避けれたから良かったけど…っ危ないですよっ!!」
思わず、というように震える声で叫び、直後ハッと口をつぐんでみせる。
「……ごっ…ごめんなさいっ……」
そして慌てたように謝罪を口にし、怯えるように後退り、俯いた。
……これで誤魔化されてくれる奴ではないだろうが……他に方法はない。
さっさと逃げる隙を見つけよう。
ずっ、と足を微かに後ろへ動かしたところで水城が口を開いた。
「なに、この子まさか誤魔化すつもりなの。」
視線は俺に固定されたままだったが、その言葉は明らかに橘に向けられたものだった。
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