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それに橘はなんとも愉しそうに笑いかえした。
「まさかも何も、そのつもりだろうよ。それどころか、俺達の隙ついて逃げる気満々みたいだぞ」
「へぇ、面白い。お前が気に入るのも少し解る気がする。確かに逃がすのは勿体ないかもね」
「だろ?」
前後で淡々となされる言葉のやり取りに耳を向けつつ、どこかに隙がないか、彼らの様子を必死に探る。
そんな俺に向かって水城がねぇ、と声を投げ掛けた。
「………何ですか…」
声を震わすことを意識してしぶしぶ反応を返す。
「君は、あくまでもさっきのを“偶然”だと?」
小首を傾げて問いかけられる。
説得力に欠けることは重々承知の上だが“それ”しか誤魔化しようがないのだから致し方あるまい。
こくりと頷いた俺を見て、水城は声を殺してクックッと笑った。
「“あれ”が偶然?この僕が、拳を偶然に避けられるなんて!あり得ないね。――あれが“偶然”で反応できるものじゃないことくらい、君だって解ってるはずだろ?」
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