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素で相手してやろうじゃないか。こいつら、俺を本気にさせたことを後悔させてやる。
そう決意し、俯いたまま眼鏡を外す。
そして殺気をこめた視線で水城を鋭く睨みあげた。
へぇ、と楽しげな声をあげる水城、そしてピュウッと口を鳴らす橘を睨みつけたまま、口元のみで笑ってみせる。
「――…縮地法だと?噂に違わず随分と武術に長けているようだな。なるほど、俺がお前らの気配に気付けなかったわけだ」
まさか普段自分がやってることに足下を救われるとはね、
吐き捨てるように言い、深くため息を一つ吐き出す。
「今までこれほど“できる”奴らは居なかったからね。油断していたと言われれば否定はできない。正直、嘗めてたよ」
気配に敏感な橘と、武術に長けている水城。しかも先程の口振りではどうやら橘も少なからず武術を心得ているようだ。
面倒なことになったと心底思いつつも、プライドを傷つけられたことに対する報復はそれ相応にさせてもらおう、なんて少しばかり楽しむ気持ちも浮かぶ。
黙らせるのは得意だ。
「――…さて、お前らは俺を本気にさせたんだ。覚悟しろよ」
二度と俺にちょっかいかけようなんて思わねぇようにしてやる
いつもの“僕”の笑顔ではない、ニッと口端を歪めて浮かべた笑みは、完全に“俺”のものだった。
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