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今にも噛みつきそうな勢いで捲し立てる橘に、横で水城が軽く溜め息を吐き出す。
そして、次の瞬間水城が動いた。
気配もなくサッと一瞬で間合いをつめた水城の唇が眼前で弧を描く。
俺の首を狙った手刀が素早く空を切った。
『――……っ…!』
――……早い……っ!!
身体を大きく後ろに反らしそれを避ける。そしてそのまま後ろに手をつき身体を跳ね上げた。
そのまま繰り出した蹴りは、水城の顎を僅かに掠るかのようなギリギリの距離で避けられる。
『……チッ……』
舌をうち、翻した身体の体勢を整え着地する。
『……っ危ないな……』
それにあわせて水城も素早く後ろに身をひき、不満そうに顔をしかめつつ体勢を整えた。
……縮地法か……。
あの気配の無さであのスピードは厄介だな。
そんなことを考えていれば水城が立ち上がり口を開く。
『ちょっと君、今の蹴りは酷くない?おもいっきり顔面狙ったよね』
『うるせぇよ、先に仕掛けたのお前だろうが。それに狙ったのは顎だ』
理不尽な不満をぶつける水城に苛立ち、顔を歪めて吐き捨てた。
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