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『なら、――さっさと負けを認めろ。こいつの腕折られたくはないだろ?』
『いいよ』
卑怯と承知した上で、脅しをこめて問いかけるも、水城は平然とあっさり即答した。
『てっめ…拓哉ぁぁあッ!』
足下で橘が怒りを叫ぶも水城は聞く耳をもたない。
『悠樹、勝負に勝つためには犠牲はつきものだよ』
『アホかっ!それ俺が犠牲になるじゃねーか!!』
『だって捕まったのは悠樹の責任だし……僕は負けたくないからね。』
…ということで、どうぞ?
こちらを向きそう言って水城は、促すように手でさしだした。
――いいのか……。
彼が混じりけのない本気の表情だったため、あまりにも橘が哀れになり、思わず視線を橘におろす。
『…………』
――……お前、可哀想だな
心底哀れむ俺の視線に橘が、その瞳やめろっと叫ぶ。
そんな橘の声を無視して水城に視線をむける。水城が再び視線で促した。
『…あ…そう』
それならお言葉に甘えて。
やっぱり水城ほどの奴の相手をするには、少しでも邪魔はないほうが楽だしな。
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