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『じゃ、橘。痛いだろうが』
『―――っり…鈴ちゃん!待て待て!ストップ!』
『――――悲鳴、我慢しろよ?』
慌てる橘を見下ろし、腕を掴む手に力をこめてにっこりと微笑みかけた。
『――っギブ!ギブギブ!分かったっ俺たちの負けだ!!』
『よしっ!!』
『――……俺“たち”……?』
『――…ぁ』
瞬間、堪えきれなかった橘が敗北を宣言し、水城の不満そうな呟きと間抜けた橘の声を共に、勝負は終了した。
こうして俺は無事大勝利をおさめたのだった。
……楽な勝利だった…と言えないことが些か不満ではあるが。
「――本当はもっと早くケリをつけて遅刻せずに学校に着くはずだったのに……」
到着したのは一限目の数学が終わる頃。しかも運が悪いことに今日は小テストがあったらしく、たった今、数学教師兼担任から説教と共に宣告されたのは、放課後の居残りである。
「――……最っ悪だ……」
教室に向かい廊下で歩みを進める中、小さく呟いた。
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