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「んじゃ、話は終わりということで」
愚兄はほっといて、菓子食いながらテレビでも見るとしよう。
やれやれと汚物を跨いでリビングへと足を進める鈴斗の視界で、さらりと黒い髪がゆれる。ギクリ、と身を竦めた。
「随分とお早いおかえりね?鈴斗」
「げっ……」
目の前ににっこりと笑みを浮かべて立つその姿に、思わず口から声が漏れる。
……やばい。なんで……今の時間ならもうとっくに出かけてるはず……っ
「『げっ』って何よ」
「なんで居んだよ姉貴!!」
不満気に睨みつける視線を無視して思いのまま叫べば、それ以上の勢いで叫び返される。
「なんではこっちのセリフよっ!あんた今9時よ9時!学校はどうしたのっ!!」
姉――響(ひびき)、みそ――……んんっ!……29歳が時計を指差す。
時計が示す時間は8時55分。あと5分で授業が始まろうとしていた。
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