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もう何が起きても動じなくなっていたはずなのに。昨日から調子が狂わされっぱなしだ。
……ああ、でも、それも当たり前かも知れない。
だって、と思う。
―……だって、今までこんなことは無かった。
“俺”じゃない、こんな“僕”に意識を向ける人間は今まで居なかった。
“僕”が演技だなんてバレたことは無かった。
――……それがこんなにあっさりと簡単に気付かれるなんて。
絶望に近い敗北感に困惑する頭を微かに振り、冷静さを取り戻そうと努める。
そんなことよりも、今考えるべきことがある……
どうにかこの状況を打破する方法を考えようとした時、そんな俺を追い詰めるかのように、如月がわざとらしい感嘆の声をあげた。
「――よくもまぁ、ここまでうまいこと成績をコントロールできるもんだ。綺麗に同じ場所を保っちゃって」
如月が持つ紙に写るグラフには、横線が入り俺の点数の数字が表記されている。
――その横線のどれもが全て同じくらいグラフの僅か下を保っていた。
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