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学校へと着いた上条と姫川さんは今下駄箱にいる。
ちなみに上条は1年2組。
姫川さんは1年4組だ。
1年生の教室は4階にあるからここから階段を上っていかなくてはいけない。
この階段を上るという行為が意外ときついのは承知の事だと思う。
毎日やってることなのに全然慣れることはない。
エレベーターを付けて欲しいものだ。
切実に。
上条と姫川さんの二人が靴を上履きに履き替えているのを僕が見ていると、いきなり僕の体を疾風が吹き抜けた。
その風が吹き抜けるとすぐに1人の人物が僕の前方を下駄箱向けて駆けていく姿が確認できた。
橘さんである。
彼女の走る姿は日ごろの練習の成果のおかげかとても洗練されていてまるで一流のアーティストの描いた絵画を見ているかのような感覚に陥った。
橘さんは陸上部である。
確か専門は100mで夏に行われる全国大会にも既に出場が決まっていると聞いている。
今日は朝練習があったのだろう。
陸上部はこの学校の中でも特に力の入れられている部活の一つであり、ほぼ毎日朝練習をしているのだ。
朝練習はそれほど激しい練習をするわけではないらしいが、とは言ってもそれなりの運動はするだろうから当然汗もかくことだろう。
そうなると臭う。
どうしても汗の臭いというものが出てきてしまうものだ。
年頃の学生ならばそれを気にして制汗スプレーを体にかけてにおいを消す努力をするだろう。
それは橘さんにもいえる事で、橘さんが通り抜けた時にはほのかにミント風の匂いがした。
だが不思議な事にそれ以上に女の子特有のシャンプーの匂いというかフェロモンの匂いが僕の鼻を突き抜けて頭をくらくらさせていた。
その影響は僕だけにとどまらず、橘さんが巻き起こした風の流れに巻き込まれた男子諸君はその驚異的トリップ作用のある匂いにどこか恍惚とした表情を浮かべていたのだった。
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