一方そのころ僕はといえば

4/6
前へ
/46ページ
次へ
彼が遅れてくることはよくあることであり、そのせいで成績に影響が出ているらしい。 これ以上成績を落とされると進級できなくなってしまうらしい。 いっそ留年してしまえばいいのに。 「はいはい!落ち着いて下さい!分かりました。明君には罰として先生と一日デートの刑に処します!え?それじゃあ罰じゃなくて御褒美だって?もう、明君ってば!そんなこと言わなくても先生は明君のこと、嫌いにならないぞ♪」 「いや、先生!何勝手に決めてるんですか!?ていうか、俺そんな事言ってませんよ!?」 「もぉ~、照れなくてもいいんですよ?さぁ!!先生の胸に飛び込んできなさい!!」 このやたらにテンションの高い変態は我がクラスの担任の先生、高城千尋(たかじょうちひろ)先生である。 ボブカットの薄茶髪に中性的な顔立ちのこの先生は、この通り変態丸出しの痴女なのだが、その自由奔放な性格のおかげで生徒たちからは「ミス・アンチェイン」と呼ばれ親しまれている。 ちなみに胸は残念な事にまったくない。 目の保養にはなってくれなかった。 この二人のいつも通りの掛け合いが聞こえるなか、一人の男子生徒が声を発する。 「おいおいおい、朝っぱらからラブコメフィールド展開させて、俺たちに見せつけてるんですかぁ?あ―あ―本当勘弁してくださいよ。見てるこっちは胸糞悪いんですけどぉ?」 愉快な愉快なラブコメ展開を破壊してくれるのはいつもこいつだ。 黒い髪を目が隠れるくらいまで伸ばし、一見オタクのようにも見えるが、しかしこいつはそんな生易しい人種ではなく徹底的にリア充たちを叩き潰そうとしている狂人である。 江西陀桐人(えにしだきりと) 完全な悪役なのだが本人としては『主人公になれなかった哀れな脇役』らしい。 その何をするのか分からない恐怖から、その知名度においては上条明を上回っているんじゃないかとも言われている。 当然彼を嫌う生徒はたくさんいるが、しかし一部の生徒からは熱い支持を受けている。 いわく、「アイツこそが俺たちイケてない奴らの希望の星なんだ!」 と。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

108人が本棚に入れています
本棚に追加