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亜乃が目に見えてホッとしたのがわかる。
いつも思うけど、あんな反応に騙されるなんてね。
「おはよ」
普通の人でも聞き取りづらいことがあるだろう音量、滑舌の亜乃の喋り方は、片耳がほとんど聞こえない私にはただの音として聞こえることがほとんど。
声を大きくして、と何度もたのんだけど1、2分大きくなるだけですぐに元に戻るので諦めた。
「音波?」
少し心配そうな亜乃が私を覗き込む。
「んー?ちょーっとボーッとしてたぁ電車の時間遅れちゃうから、歩こぉかぁ」
遅れたことへの謝罪はなかった。
並んで歩き出しチラリと横を見る。
あ、また背伸びてる。
そう言えばこの前、もうすぐ160越すんだ、と嬉しそうに言っていたのを思い出す。
幼いころから体の弱かった私は中学の時点でただでさえ伸びなかった背が伸びなくなった。
「亜乃ぉ背ぇ伸びたー?」
「え?そうかな?」
嬉しそうに聞いてくる亜乃
「うん、160いったかもよぉ?」
普段私たちの間に会話はない
喋り方を変えてくれない亜乃にイラついた私が、喋らなくなり必然的に話し下手な亜乃も喋らなくなった。
「そうかなー?音波は今何センチだっけ?」
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