第二章 緑の群、渓流の鬼達

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《5》 「シズク先輩!ホムラ先輩!」 シズクとホムラがキャメルレグの亡骸の傍らで座っていると背後から聞き慣れた声が聞こえて来る。 茶髪のショートヘアを微かに揺らしながら走って来るのは、ノース支部から一緒にやって来た後輩のノエルだ。 「ノエル!遅かったけど何かあったの?」 「すみません。畑の片付けを手伝ってたら遅くなっちゃって…。」 頭をぺこりと一度下げ、また頭を上げる。 畑というのは、この魔物の討伐を依頼した依頼人の畑である。 依頼人である農家のおじさんのディックは畑でトウモロコシを栽培している。 トウモロコシは5の月に植え始め、8の月に収穫するそうだ。 夏前に植えてから8の月まで手塩にかけて育てたトウモロコシは高く立派に育った。 本人曰わく、甘味が強い、最高の出来だという。 しかし、さて収穫だという2、3日前になって、今座っている横で生き絶えている魔物が畑のトウモロコシを狙って荒らすようになったのだ。 今回はそういう訳で魔物討伐を行っていたのだった。 「うわっ!さっきの!もう倒しちゃったんですか? すみません。私も手伝わなきゃいけなかったのに」 「気にするなよ、そっちはそっちで大変だったんだろ?格好で分かる」
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