第二章 緑の群、渓流の鬼達

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森の入り口から出ると光が一気にこちらに差し込む。 眩しさに一瞬目を奪われるが、やっぱり薄暗い森から離れ、明るい場所に出るとなんとなく安心感が胸にわいてくる。 森の入り口から一直線に延びる道を3人はとぼとぼと歩き続けた。 道は左右の畑に沿って延びていて、トマトやナス、キュウリ等の夏野菜の鮮やかな色がちらほら目に入る。 依頼人のディックさんの畑もこの筋に位置する。 そう考えていると、丁度左手に背高な植物が現れた。 高くまで伸びた茎、緑の直葉、独特な髭を生やした実は間違いなくトウモロコシだ。 すると、そのトウモロコシの背とは正反対に低い背をした老人がトウモロコシの樹海から姿を見せた。 「おう、嬢ちゃん達!魔物は退治できたか?」 もう残り少ない白髪を整えながら農家のディックは私達に尋ねた。 「はい!って言っても、私が合流した頃にはもうこのお二人が退治してくれてたんですけどね」 ノエルが申し訳無さそうに答えるとディックは首を左右に振る。 「なぁに、嬢ちゃんは畑の片付けを手伝ってくれたんだ。気にするな。 そっちの2人も、儂の息子(トウモロコシ)の仇をとってくれてありがとうな!」
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