第二章 緑の群、渓流の鬼達

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手には5、6本程の トウモロコシを持っている。 「嬢ちゃん達が守ってくれたトウモロコシだ。持っててくれ」 正直、ディックの心遣いはかなり嬉しかったのだが、3人はそれを受け取る事が出来ない。 「あ、あの、実はですね。隊の方針として、隊で得られる報酬以外は受け取ってはいけない事になってるんです」 ノエルは相手の表情を伺いながら丁寧に説明する。 ディックは一瞬がっかりした顔をみせたが、ぱっと何か思いついたのかニヤリと歯を見せた。 「なるほど、それは残念だったなー。 ところで、この品種は“スイートコーン”というんだがな。生でも食えるそりゃ甘い品種なんだ」 そう言うと手に持ったトウモロコを1本、片手で葉を剥き、現れた黄色い実にかぶりつく。景気のいい音が辺りに響いた。 「んんー!甘いなー!こんなの街に着くまでに食っちまって、ゴミ箱にでもポイしたら、証拠も残らねぇねのになぁ。あー残念だ」 もう一かぶりするディックを見て、私はゴクリと唾を飲み込んだ。 すると、ディックは手に残った葉のついたトウモロコシを差し出す。 「え、えーと、あの…、頂きます」 私は我慢出来ずにそれを受け取った。
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