第一章 影の始まり

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プロミス・タワーとは現在ノース地方において建設中の施設である。 私達が暮らす、魔法国家スピルと隣国の妖国アースラとが共同で企画、建設を行っている。 四十年前、スピルとアースラ、二国によって争われた大戦“ナーブル大戦”。 ナーブル平原での大戦は三年に渡って行われ、最終的には両国和解し、四十年経った今では友好な関係 を築いている。 プロミス・タワーはこの大戦で犠牲となった者の慰霊碑であり、残された遺族のための礼拝堂であり、そしてスピル・アースラ両国の友好を象徴するものでもあるのだ。 「今でも、アースラに対して敵対意識を持つ者も少なくないわ。 現アースラの帝、スナル帝はなかなかの切れ者で信頼できる方らしいけど、暴動が起きれば裏の幹部に後押しされて戦に持ち込まされる可能性もなくないわね」 メリルはそこまで言って止めると、カップを持ち上げ口つけ、机に戻した。 「だから、現在、二級兵以上はタワーの周辺の警備で出払っているってわけ」 「理由は分かりましたけど、何故私をご指名に?」 また生意気な口調になったかな?と思いつつも今度は最後まで聞いた。 「これと言った理由はないのだけれど、あえて言うなら女性隊員の方がこういうの得意そうだと思ったから」
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