第一章<開かずの扉>

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「はは、何気たのしみだな。」 本館から東館へ移動する渡り廊下で、翔夜は少し距離をとって歩くポニーテールの少女に話しかけた。 「そう・・・?」 奈々美は、めんどくさそうにタメ息をついて、背伸びをする。 「てかさ、奈々美、お化けとか駄目じゃなかった・・・?」 翔夜が、奈々美の顔をのぞきこみそう尋ねると、 「はっ、本気で出るわけないじゃない!!」 そういって、顔をそらす。 「大体冗談で言ったのに、あんたが煽るから・・。」 「いや、大体陽一だろ・・・。」 泣きかけの顔で、ムキになり翔夜の背中を殴りつける。 「イタっ!? 悪かった、悪かった。」 背中を押さえ謝る翔夜。 「おーい、おいてくぞー。」 陽一が、大声で二人に向かって声をかける。二人は「ごめーん」と笑いながら走って合流した。 「何イチャついったの?」 「イチャついてねぇよ。ただ奈々美があまりにも恐がってたからおちょくっただけー。 奏も元気ずけたろっか?」 合流した翔夜に向かって笑いかける奏に対して翔夜は、言葉を返し頭をなでる仕草をする。 「いらんわ!」 奏は言葉と同時にこぶしを翔夜に向けて突きつけてきた。 紙一重で翔夜はパンチをかわす。 「おいおい。喧嘩すんなよ。」 想太が、二人を止めようとする。 「大丈夫だよ。俺は、女には手出さねぇから。てか、最近マジ奏恐いわー。 すぐに暴力振るうし、言葉キツイし。なぁ?」 翔夜が、みんなに視線を送る。 「確かに。」と、遠くで三谷がうなずいた。 「えっ、そう?」 と、言って奏はもう一度パンチを繰り出した。 軽くよける翔夜。だが別の腕からもう一発のパンチがとんでくる。 予想外の一撃に惑い、とっさに腹に力をいれ最低限のダメージを殺す。 「イタッ!?なんで、2発??」 翔夜は、パンチのあたった腹を押さえて、奏を見た。 「三谷の分。」 奏は、笑ってそういった。遠くで三谷が、自らを指差し「俺!?」とあせる。 「俺関係ねぇーじゃん。」 翔夜の言葉でみんなが、一斉に笑い出す。すれ違う生徒たちが驚いている。 「いいなー。二人とも仲良くて。」 彩夏が、二人の後ろで笑っている。 「仲良くはないでしょ。てか、翔夜には言わないほうがいいよ。 あいつあれでも、気にしてるんだから。奏のこと・・・。」 奈々美もつられて笑いながら、彩夏に言った。 彩夏は、戸惑いながらもうなずいた。 そして、ついに東館の4階にたどり着いた。
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