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「.....っ」 「.....うっせ。黙れ」 ここは、車中。 あたしは無理矢理ヤツの手によって、車に連れ込まれ治療を受けてやっている。 他人だったら、絶対に訴えてやるのに。 「....らっれ...。ホレ....」 口の中に綿棒を入れられ、傷口に薬を塗られる。 「....ったい.....!」 バシバシ叩くけど、矢部は離してくれない。 「.....暴れんな。そんで騒ぐな」 グッと手を押さえつけられ、あたしは静かに口を開けることにした。 「......」 「.....よし。終わり」 満足げな顔をして、あたしの背中をバシッと叩く。 やっぱり容赦無い。 矢部はあたしのことをすぐに見破れる、マジシャン。 小さい頃から、転けたり親に怒られたりしたら、すぐに見つけられた覚えがある。 「.....お前、この傷兄貴が?」 救急箱に薬を片付けながら、矢部は言う。 「.....違う。あたしが間違えて噛んだだけ」 「.....ふーん...」 「......」 「お前は相変わらずだな.....」 次はポンポンと頭を撫でられた。 矢部は名残惜しそうな顔をして、ウンウンと何か考えてる。 「.....お前に全て厄介ごとが降りかかってくるもんな....」 ポツリと呟く。 「.....別に.....そんなこと.....ない」 あたしは、仕方がないだけだもん。 「.....お前をこんなダッサイ格好にしたのも、あの両親だもんな」
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