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ピョンとあたしの三つ編みを触り、次はダテ眼鏡を指差す。 「失礼ね。あたしは、ダサいと思ったことない」 それは嘘に近いかも知れないけど、今更昔のあたしになんか戻れない。 「小学校までは、可愛かったのに.....」 矢部はガクッと首を落とし、ああっと唸りながら頭を抱えている。 矢部、失礼なんですけど.....。 「.....うるさいよ」 「....兄貴は、ああいう奴だからな」 「.......」 それぐらい分かってる。 「お前の姉が両親の言うこと聞かないせいで、お前に......」 それは嘘だよ.....矢部。 言うことを聞かないのは、あたしだ。 あたしが言うこと聞かないから、お父さんやお母さんが手を妬いているんだ。 「......矢部。 あたしはそんなこと思ってないから。 今回のは仕方ないの。 でも.....ケガの治療はありがと。 じゃあね」 あたしは車のドアに手をかけたら、矢部が笑う。 「.....意地張んなよ? ガキなんだから」 そう言ったら、矢部はあたしの背中をバシッと叩き、何かあったら電話しろって言ってまた笑った。 「.....フン」 そんな心配されなくても平気よ。 車から出て、校門に向かう。 もうちょっとで七時。 委員会の仕事が始まる。 さっきまで痛かった口の中が、全然痛くなくなってて、やっぱり矢部はマジシャンだなって思った。
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