第15章

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「…ん…」 岩場で眠っていたカズヤが、ゆっくりと身体を起こす。 その様子を、私は海中から少しだけ顔を出し、見守っていた。 頭をさすりながら、ぼんやりと辺りを見渡すカズヤ。 なぜ自分が海に来ているのか、 寝ていたのかを、考えているようだった。 ふと、濡れていてる自分の身体を見て、不思議そうに首を傾げる。 少ししてから立ち上がり、ゆっくりと歩きだした。 カズヤはまだ微睡む意識の中、本能で自分の有るべき場所へと帰っていく。 着く頃にはきっと、自分が海にいた事さえ、覚えていない。 今さっき交わした『約束のゆびきり』も、覚えていない。 私に繋がる記憶は、何一つ覚えていない。 覚束ない足取りで岩場を歩いていくカズヤの背中が、段々と小さくなっていく。 「カズ…ヤ…」 小さな声で呼びかけると、声が擦れた。 涙で視界が歪んで、カズヤの後ろ姿が上手く見えない。 .
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