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眠りについている、ナツの柔らかな頬に、そっと手を当てた。
ついさっき見た10年程前の幼いナツの姿と、重ねてみる。
ナツは背も伸びてて、大人っぽくなってて、綺麗になってて…、
でも 、何も変わってない。
ダークブラウンの短い髪も、
男っぽい口の悪さも、
…自分を犠牲にして他人を想う優しい心も…。
何一つ、変わってなんかいない。
だから僕は、またナツに惹かれて、恋をしたんだ。
腕に力を込めて、ナツの身体を抱きしめる。
「…なんで、なんで消した記憶の事を言ってくれなかったんだよっ…!なんでっ…」
「言えなかったのよ」
「…え」
顔を上げると、岩場の縁に腰を掛けているカチュアがこちらを振り向いて見ていた。
「カチュナツは自分の命の期限を悟っていたから、言えなかった…」
「……っ」
「また別れなきゃいけないから、言えなかった。あなたが過去を思い出したら、別れる時にまた辛い思いをさせてしまう…」
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