第16章

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「……幸せなわけ…、あるかっ…」 もう、知ってしまった。 ナツと一緒にいる時間が、どれだけ心を満たして、かけがえのない時間だったかを、僕は知ってしまっている。 『出会わなければよかった』なんて、思える筈がない。 例えナツが、僕と出会わなければよかったと思っていても…。 「ナツ…、ごめん。自分勝手で…ごめんっ…」 抱きしめ、ナツの頬に擦り寄ると、ナツの身体がピクリと動いた。 「ん……」 ナツの口から、微かに言葉が漏れる。 「…ナツ!」 咄嗟に身体を離して、ナツの顔を覗きこんだ。 眉間に皺を寄せたナツが身を捩り、少しずつ意識を取り戻していく。 「…カチュナツの説得、お願いね」 「え」 カチュアの声に反応して顔を上げた時には、岩場の縁にカチュアの姿が無かった。 海の水面、大きな波紋を残して。 .
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