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振り返ると、少し離れた海から顔を出したフィルシャとその仲間達が、険しい顔で私を見ていた。
「…助けるんだよ」
「何で人間なんかを助けるのよ!人間を助けるって事がどういう意味だかわかってるの!?」
嵐の中、フィルシャの叫び声を聞きながら、カズヤの身体を岩場に上げる。
「聞いてるの!?カチュナツ!!」
「……」
自分も岩場に上がり、意識の無いカズヤの頬を叩く。
「カズヤッ!!カズヤッ!!」
青ざめたカズヤの唇に手を触れ、言葉を失った。
…息をしていない…。
真っ白になった頭の中で、瞬時に思い浮かんだカズヤを救えるかもしれない手立て。
…口から息を吹きいれれば…。
人間への口付けが禁忌だとか、
フィルシャや仲間達が見ているとか、
躊躇している時間は無かった。
覚悟を決めカズヤに顔を近付けた時、遠巻きの人魚達から悲鳴が上がる。
「…カチュナツ!!」
カズヤに口付けをする直前、カチュアの声に呼び止められ、顔を上げた。
少し離れた海の中から岩場を見上げているカチュアは、顔をクシャクシャにして泣きながら、首を激しく左右に振っていた。
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