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いつも冷静で、涙など見せた事の無いカチュアが、取り乱して泣いていた。
…カチュア…。
私の唯一の理解者。
はみ出し者で、手がかかって、一人ぼっちの私に、いつも優しい笑顔で隣にいてくれた。
カチュア、ありがとう。
カチュア、ごめん。
視界が涙で歪んでいく。
雨に濡れた頬の上を、大粒の涙が伝う。
カチュア。
私にはカチュア以外にも大切な人が出来たんだ。
私を大切に想ってくれる人が出来たんだ。
全てをなげうってでも、守りたい人が出来たんだ。
目を強く閉じ、もう一度カズヤの身体に向き合うと、ゆっくり顔を落とした。
カズヤの唇に自分の唇をあて、強く息を吹きこむ。
降りしきる雨音と、岩場を打ちつける波音に紛れて、カチュアの泣き声と人魚達の悲鳴が聞こえた。
顔を離して強く息を吸い、何度も何度も、カズヤの体内に息を吹き入れる。
目を覚まして、カズヤ。
生きて、カズヤ。
…生きて…。
カズヤ…。
カズヤ…!
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