第15章

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先程までの嵐が嘘のように、厚い灰色の雲が風に流されていく。 弱まった雨が、岩場に横たわるカズヤの頬に優しく打ちつけていた。 「……ん…」 閉じられた睫毛がピクッと動いて、カズヤが顔を小さくしかめた。 私は安堵の溜め息を漏らして、濡れて額に張りついたカズヤの前髪を、指で脇に流す。 「カズヤ…」 小さく呼び掛けると、カズヤの瞳が薄く開いた。 声の元を辿るように視線を左右に彷徨わせる。 カズヤの漆黒の瞳に私の姿が映しだされると、カズヤの身体がビクッと反応した。 「……おね…ちゃ…」 弱々しく私を呼んで、ゆっくり身体を起こす。 「…大丈夫か?苦しくないか?」 「…あ…」 私の問いにカズヤが目を見開く。 ずぶ濡れの自分の身体を見つめ、眉尻を下げて私を見た。 「……僕、海に落っこちちゃったんだ…」 「うん」 「お姉ちゃんが、助けてくれたの? 「…うん」 岩場に座ったカズヤの身体がよろけて、咄嗟に手を出し支える。 「…僕ね…お天気すごく悪くて…お姉ちゃん、大丈夫か心配で…海に来たら足、滑っちゃって…」 「……うん…」 カズヤの瞳から溢れる涙を、指の背でそっと拭う。 「………やっと、やっと…、お姉ちゃんに会えた…っ」 「…うんっ…」 会えなかった時間を埋めるように、お互い強く、強く抱き合った。 カズヤの顔。 カズヤの声。 カズヤの体温。 カズヤの匂い。 全てが懐かしくて、愛おしい。 「…ごめん、な、カズ、ヤ…」 気がつくと私も泣いていて、言葉が嗚咽で詰まる。 会えなくて、心配かけて。 私のせいでこんな目に遭わせて。 ごめんな…。 …良かった。 カズヤが無事で…。 .
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