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「…カチュナツ、こっちに来なさい」
「……はい」
その日の夜、私は長に呼び出された。
「フィルシャから聞いたわ。人間を助けて口付けしたと言うのは本当?」
「…本当です」
闇が支配する海底。
微かな月明かりに照らされて、長の眼光が鋭くなったのが見えた。
それでも私は目を逸らさなかった。
悪い事をしたつもりは無いし、後悔していなかったから。
「…愚か者!お前などもう仲間でも何でもない。汚らわしい裏切り者め…!」
長が目を細め、口元を手で覆う。
私と一緒の空間にいるのさえ、耐えられない振る舞い。
「すみませんでした。…二度と仲間達の前に現れません」
「当たり前よ!」
長が声を荒げた。
「人間にも報いが必要だわ」
冷たい長の言葉に、思わず身を乗り出す。
「カズヤはっ…、人間は何も悪くありません!私が全て報いを受けます!だからっ…」
「これ以上私に近寄るなっ!」
「……っ」
強くいさめられ、唇を噛み締めた。
「…人間が二度と仲間達の前に現れないよう、人間の記憶を消します。」
後退し、小さな声で長に懇願する。
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