13人が本棚に入れています
本棚に追加
「だからっ…、だから人間にはどうか手を掛けないでくださいっ…」
深くお辞儀をしていると、長が鼻で笑う声がした。
「そうまでして人間の肩を持つのか。人間なんかに毒されて…哀れな子」
「……」
「お前が全ての報いを受けると言ったな?」
「…はい」
「どう報いを受けると言うの?」
下げた頭をゆっくり上げると、蔑んだ目で長が私を見ていた。
怯みそうになる気持ちを奮いたたせて、長を見据える。
「命尽きるまで一人、汚染された海域に身を置こうと思っています」
「……」
長が片方の眉をピクリと上げた。
「随分な覚悟ね」
「……」
「いいわ。汚染された海域で身を心も汚染されて、一人虚しく朽ち果てればいい」
長が釘を刺すように、声を低くする。
「二度と、二度と私達人魚の前に姿を現すな」
一方的に打ち切られた話。
長は尾びれを強くなびかせ、深い闇に包まれた海底の方へと姿を消した。
私はその光景を、まるで夢でも見ていたかのように、ただぼんやりと見ていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!