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岩場にいる私と、海にいるカチュア。
禁忌を犯した事で生まれた見えない壁が、私達の間に確実に存在していた。
もう一緒に並んで泳ぐ事が出来ない、隣にいる事が出来ない、
話す事だって本当は許されないんだ。
「…私はいいんだ。どうせ死ぬまで一人なら、例え早く死ぬ事になってもここにいたいんだ」
「人間の記憶を消さなきゃいけないんでしょう!?」
カチュアが眉をしかめて、私を見上げる。
私は何だかバツが悪くて、困り顔で笑ってみせた。
「…その話も長から聞いたんだ?」
「ええ。人間の記憶を消したら彼はもうここに来ないわ!カチュナツがこんな所にいる意味なんて無いじゃない!」
「意味はあるよ」
「カチュナツ!」
カチュアが言葉を強めた。
「私と一緒に行きましょ。仲間の目の届かない所に」
思いがけない言葉に驚愕して、目を見開いた。
「何言ってるんだよ!…そんなバカな事出来るかよ!」
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