第1章 ―その日は突然に!―

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―200X年1月10日― ―東京都目黒区― 「よッ!」 「おう、来たか。」 声を掛けた俺の名は 弾井 寛 (たまい ひろし) 35才、元航空自衛官で今はフリーのカメラマンだ。 今日は、取材を兼ねて航空自衛隊時代の同期である、高崎二尉の所属する防衛研究所へ見学に来ていた。 高崎とは熊谷にある、第二教育隊時代からの付き合いで、俺が訳あって空自を辞めてからもたまに、シャバへ飲みに連れ出したりしていた仲だった。 防衛研究所とは、幹部自衛官に世界情勢や最新装備等の教育を行ったり、現装備品や新兵器などの研究を行っており、また太平洋戦争の戦史の編纂もここで行われていた。 俺は前からここに興味があり、一度個人的に取材をしようと思っていたのである。 そこへ同期の高崎がひょんな事から出向となり、ついに俺の念願が叶い、招かざる見学者となって今日、ここを訪れたのである。 招かざるとは俺がマスコミの人間だったからだ。 最近、防衛省では情報漏洩が続きマスコミに対し敏感になっていたのだ。 そこで俺は一計を案じ、高崎の義理の弟に成りすまし、目立たぬよう職員の少ない日曜日に見学に来たのである。
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