第1章 ―その日は突然に!―

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同日深夜、この当時陸軍大将であり防衛軍司令官の要職に付いていた、東久邇宮(ひがしくにのみや)稔彦王(なるひこおう)の寝込みを無理を言って謁見を申し込み彼の件を話し、大反対するであろう陸軍をまとめる大役を願い出たのであった。 稔彦王はフランス留学により帝国と欧米との技術力の差を痛感しており、かねてより東条内閣には批判的であったのである。 そこで山本長官は決断しかねている稔彦王に、例のレコーダーとレーザーポインタを見せると、それに驚き感嘆して二つ返事で快諾した。 このようにして山本長官は天皇陛下に近い方々と、陸海軍の良識派と言われた人々の間を飛び廻って行った。 以上の事は後日、山本長官が乃木所長と今後の帝国軍組織について話し合っている際、長官付き士官から俺が聞いた話である。 それからの一週間はめまぐるしく過ぎて行った。 乃木所長と俺は宇垣参謀長と三人で山本長官が訪れた方々の所を次々と再訪し、ノートパソコンでその後の日本の歴史を見せた後は、乃木所長が単独で膝詰め談判をし説得していった。 そしてついに、乃木所長は念願の天皇陛下との謁見の日を迎えることになったのである。
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