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車に戻ると、妹は後部座席から助手席へと移っていた。
おかえり
妹にこれを言われると、何かフワッと、心が動いた。
帰るか、そう言って運転しながら妹の手を握った。
…
こうやって、二人の時に手を握り合うようになったのは、ある夜からだった。
家で僕が深夜に映画を見ていると、何かが聞こえた。気のせいかと思うが何かが聞こえる。
いったん映画を止めて、耳を立てた。それは、啜り泣くような、でも強く激しい泣き声だった。
妹との同棲から約一月、初めて、妹がか弱かった。
僕は堪らない気持ちになった。
それでもすぐには何も言えずにいた。当たり前だ、妹と一緒に住んだその日から、僕は必ず妹の後に風呂に入った。
洗濯機を毎回調べても下着は出てこない、やはり妹もこの一緒にいなかった時間が、僕らを兄妹よりは、男女にしていた事が分かっていたのだ。
こんな変態みたいな事をしている自分が信じられなかった。
下ネタも言わない、彼女とも一月に一回か二回程度、特別性欲が強いわけではないのに妹には、何か漂わせるものがあったのだ。
それでも妹が出掛けた日に僕が家にいれば、躊躇なく妹の部屋に入り、使用済みの下着を物色して、出来るだけ同じ形で戻していた。
情けなかった。
その1人行為が終わり果てた時、愚かしすぎて言葉も思考も止まった。
あんな小さな頃から対象に見ていた、僕は変態すぎて、妹にかける言葉が見つからなかった。
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