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今日も今日とて
俺はコボルトに追いかけられる。
prolog‐村人Aの役割‐
「たっ、助けて下さい!」
肩に爪で傷を付けられ、血をだらだらと流し、痛みを堪えるような表情をしながら息絶え絶えに。
俺は村の入り口にいた勇者一行と思われる集団に近づいた。
「だっ、大丈夫か?!」
血みどろの俺に、チームのリーダー…、つまり勇者と思われる人物が支えるように手を伸ばしてきたので、それにある程度の体重を掛けつつ、素早く勇者の装備を確認した。
(2つ目の村で既にロングソードと安物の鎧をつけている…。ふむ、今回の勇者は旅に対して慎重派のようだ)
今回の戦闘はラクそうだな、と内心ほくそ笑んだところで、ようやく俺を追いかけてきたコボルト様の登場だ。
「わぁっ!た、助けて下さい勇者様…っ」
言いながらも、コボルトに向かうのはどうやったって同情の視線だ。
だって森の中で俺にいきなり攻撃されて、それに苛立って爪で軽く応戦しつつ追いかけたら村に出ちゃって勇者に退治されるとか、不憫すぎる。
しかしそれが俺の役割なので仕方ない。コボルトだって、それは分かっているはずだから、同情はしても話の流れを変えることはない。
俺は誰にも聞こえないようにため息を吐きながら、痛みを堪えるように剣を構える。
「微力ながら、手伝わせて下さい」
俺を庇うように立ち、武器を構えた勇者一行にセオリー通りの言葉を放って。
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