村人Aの逆襲

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この世界には役割がある。 魔王という役割や勇者という役割から始まり、王様、武器屋、魔法店の亭主など、その役割は様々で、生まれたときから与えられるその役割を全うするのがこの世界の理だ。 この村の人間にだって役割は与えられている。 例えば村の入り口に一番近いところに住んでいるおっさんの役割は、外から村に来た人々に「ここはリーチス村。都市の東に位置する小さな村さ」と言うのが役割だ。 他にもこの村で一番大きな家に住んでいるじいさんの役割は村長として村を護ること、ひいては勇者が村を訪れたときにコボルト退治を依頼するのが役割だ。 そしてかつて村一番の瞬足だった俺に与えられた役割は、コボルトに襲われて怪我を負いながら勇者に助けを求めるという、なんとも情けない役だった。 ただ、俺にとって本当に厄介なのは、一生をただ1つの役割に費やしなければならないことだけではない。 役割を務めるにあたり、与えられた特権が厄介だったんだ。
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