苦悩

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泉さんはやはり疲れた表情だったが、口を開いた。 「それだけが謎だったが、今君の話を聞いて合点がいった部分がある」 俺はまだよくわからなかったが、例によってブレイブは鋭かった。 「戦力の分散、か」 「その通り」 俺は交互に二人を見た。 「どういう……?」 「いいかい、件の状況で、例の情報が入った後に一方的に通信が遮断されたとしたら。想像してごらん。取るべき策は限られてくる」 泉さんの後をブレイブが引き継いだ。 「転移には時間がかかる。偵察を送って手遅れになってはまずい。 真偽の確認ができないのなら最悪を想定しなければならない。つまり最初から大きな戦力、総団長か全部隊長のどちらかを送るしかない」 「なぜなら本部を失うということは人類にとって破滅を意味するからね。例え戦士の大部分はレミナスに集中していたとはいえ」 それがなんだっていうんだ?  まだわかっていない俺に少しイラついたのか、ブレイブは早口になった。 「オレ達への救援……総団長たちの到着を遅らせたかったのは誰だ? わざわざ死にかけだったお前を治してまで話をしたがっていたのは誰だ?」 そこで俺も答えが分かった。 「じゃあ、あいつが? あの龍星の子のスパイが騎士団の中にいるっていうのか?」 あり得ない、と思った。 そんなぽっと出のやつが周到に計画していたなんて思えない。 騎士団にはその影すら認知されていない鎧の男が騎士団にスパイを? それじゃあまりにも……あまりにも一方的すぎやしないか。
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