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ヴァネッサとかいうカラスは明らかに賢さを湛えた黒い瞳で俺を見つめ、小さく鳴いた。
その静かな黒い眼を見ていると、嫌でも同居人のことを思い出した。
満身創痍で倒れた、奴の安否が気にならないといえばうそになる。俺はついに現実と向き合おうと腹をくくった。
「ブレイブ、何が起きたのか知りたい」
ブレイブはヴァネッサ姐さん(騎士団本部一帯の鳥界隈ではクイーン・ヴァネッサと呼ばれているらしい)にへこへこと辞去の言葉を述べてからパタパタと病室の中に入ってきた。
「これから泉さんにも話を聞くけど、おまえの知ってる範囲で良いから教えてくれないか。あの後何があったんだ?」
「うーんとな、とりあえず順を追って話すぞ」
そしてブレイブはあの日、レミナスメッセのメインホールで気を失った後のことを話してくれた。
いち早く意識を取り戻したブレイブは、自分たちが駆けつけたテオ全部隊長によって転移されていることに気付いたらしい。
転移ぎわに壁にぶつかって伏しているエーヌに泉さんが歩み寄っていったのを感じたとか。
(「マスターの星力は特殊だから、動きが分かった」)
そしてその後すぐに病院に運ばれた俺の体は例の治療のスペシャリスト直々に検査され、異常がなかったのでこの病室に移されたとの事。
それが昨日の夕方のことだ。
その後回収してもらった器、つまり地球でのブレイブの体に入り、泉さんと総団長と少し話をして、詳しい話は俺が目を覚ましてからということにしたらしい。
「それじゃ結局、泉さんもレミナスに来たんだ……」
「まあ、そうだな」
俺は一瞬、本部の防衛という名目で、敵の首魁との戦いから遠ざけられたという師匠に思いをはせた。泉さんが来たということは、本部の安全が確保されたということ。
それは単純に考えれば……エーヌの脅威は去ったということを意味する。
「だが気になるな、あの鎧の男……」
俺はブレイブの言葉に、気を失う前に突如として現れた男の存在を思い出し、身震いした。
そもそもあいつは誰で、どうしてあの場にいたのか。
そして、どうやって、あの場にいられたのか。
「ああ……」
その時病室のドアが開き、ガーラント総団長と俺たちの師匠の泉四花が入ってきた。
「おう、目が覚めたようじゃの」
総団長は柔和にほほ笑むと椅子を一つ引き寄せて座った。
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