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「すべての人間を、殺す……」
「はい……」
あいつは確かにそう言った。
「そして……それが龍星の子の使命だとも言っていました」
その時泉さんは、僅かにだが眉をピクリと動かした。
「それは確かに龍星の子だったのか?」
ブレイブが声を上げた。
「ああ、それはオレが保証する。あの時奴は強大な星力を放ったが、最後の一瞬、奴以外の星力を感じた。底知れない、邪悪な意思も感じた」
最後の言葉だけ、俺は違和感を感じた。
奴が龍星の子だというならばそれは同時にある事実を意味する。
にもかかわらず。
邪悪。
本当にブレイブはそう思っているのだろうか。
「そうか……そんなことが……」
泉さんは相当ショックを受けているようだった。
「はい。でも龍星の子が現れるのは一つの時代に一人のはずですよね。なのになんで……。
それに奴が本当に十一代目なら俺は十二代目ってことに……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
泉さんは額を押さえて、よろよろと総団長が座っていた椅子に座りこんだ。
「すまない……私も実はいっぱいいっぱいで」
こんな余裕のない泉さんを見るのは初めてだった。
よく見ると髪には艶がなく、唇は渇いていた。
「泉さん……」
やはりエーヌと何かあるのか。
――俺が殺したエーヌと。
俺は軽く頭を振ってその考えを振り払った。
そのことは後回しだ。後回しにしなければ。
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