詩織と信吾

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『…うん。まぁ…ね。あのぉ…ぉ…』 詩織が返す言葉に困っている。そんな詩織を見て、靖高くんは笑い出した。 『うははは。そっかそっか。また今回も駄目だったか』 『…。』 靖高くんは僕らにニコリと笑ってみせた。 『…けど、採用されなくて良かったと思うよ。な。咲絵』 『えっ?ヤスくん…何で?』 『やっぱり詩織ちゃんぐらいの凄い演技力を持った子は《ドラマのヒロイン役で》デビューを飾らなきゃ。勿体ないってこと…だよね。ヤス』 『そうそう。咲絵の言うとおり』 咲絵ちゃんは『ほら。二人とも。何突っ立ってんの?座ろうよ』と、僕らを隣に座らせた。 靖高くんと咲絵ちゃんは《arrange-notes(アレンジ・ノーツ)》というJazzグループのメンバー。通称(ノーツ)。 リーダーは桑山光博くん。23歳。 先日、Jazz音楽祭に参加した彼らのライヴを見に行ったら、光博くんはコントラバスを演奏してた。 4人とも本当、カッコ良かった…。 佐藤靖高くんはトランペット奏者。僕と同じ20歳。 《ノーツ》のメンバーは全員お洒落でカッコいいけど、その中でも靖高くんが一番イケメンかなって思う。 靖高くんには佐藤浩志くんという兄がいて、浩志くんはリーダーの光博くんと同じ23歳。サックス奏者。 靖高くんと浩志くんのお父さん《佐藤邦市さん》も、有名なJazzトランペット奏者らしい。今も現役だとか。 角原咲絵ちゃんはピアノ奏者。僕らより年下の18歳。そしてピアノを弾きながら、Jazzシンガーとして歌も歌う。 靖高くんと咲恵ちゃんは、同じ某音大の現役生。 お父さんがスペイン人ってのもあって、顔は日本人離れしてて物凄く可愛い。 《ノーツ》メンバーにはもう1人。本田延…ほんだすすむ…くん。Jazzドラムの担当で、彼は22歳。 Jazzバンド《arrangel-notes》は、テレビなどで脚光を浴びる…というよりも、全国を廻ってライヴをしていることの方が多い。けど、ファンも全国あちらこちらに多い。 『…ってことで俺ら、そろそろ品川駅に向かうわ』 そう言って立ち上がった靖高くんと咲絵ちゃん。 明後日から四国地区と九州地区を廻って、1ヶ月ほどライヴツアーしてくるらしい。 『咲絵ちゃん。気を付けてねー』 『ありがとう。詩織ちゃんも私達が帰ってくるまでに、ドラマのヒロイン役ゲットしておいてね!』 『きゃははは…はーい♪』 詩織は咲絵ちゃんと、手を振り合って笑顔で別れた。
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