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冴嶋社長へ向けた詩織の質問に、社長が答えるその前に、藤里さんが先に語り始めた。
『僕の所属する制作会社が、ドラマの制作プロデュースを担うことになったんです』
『…えっ!?』
『それは…どういうことですか?』
僕らの驚きの反応を見て、冴嶋社長…あはははと笑ってる…。
冴嶋社長は、僕らに分かり易く説明してくれた。
詩織をヒロイン役として抜擢してくれるドラマを、探しても探してもなかなか見付からない。
今後もいつ本当に見付かるのか…あるいは、いくら待っても見付からないかも…。
だったら《探す》んじゃなくて《自分達で作ろう!》…ってことらしい。
『…本当は、私が3週間ほど前から《株式会社ルックフォワード》に、藤里くんをご指名でね、このドラマ企画制作の話を持ち掛けてたの…』
…冴嶋社長からの依頼を受けて藤里さんは同じ会社の脚本家の方と《恋愛系ドラマ》や《看護医療系ドラマ》など、色々な企画を考えていた。
けれど、企画の立案は思うようには進まず…計画が全て行き詰まってしまった…。
そういえば…そもそも《岡本詩織》という本人すら知らないのに、いきなり企画を立ち上げようってのが無理じゃ…。
『…というわけで、僕は今日にお邪魔した、というわけなんですが…』
『それで私と話しているなかで、つい《あの街での出来事》を、藤里くんに少しだけ話してしまって…』
『あー…。』
『……。』
僕らの《あの頃の出来事》を、ちらりと耳にした藤里さんは『…これだ!』と思ったらしい。
『…岡本さん達のその頃の話を、冴嶋社長から聞いて、物凄く面白くて、それで…』
『あの!』
藤里さんの話を、詩織が途中で止めた。
『…すみません、藤里さん。えっと…どこまで詳しく聞いたんですか?…社長から、私達のこと…』
『あ…そうだね。冴嶋社長から聞い…』
『すみません!もう一つ質問させてください!』
詩織の迫力に藤里さんもびっくり。
『あと…どんな感じに面白く思えたのかも、教えていただけませんか?』
『はい。じゃ、今の質問に答えさせてもらいます』
…僕が元々だったこと…詩織と出逢い《女装の復讐劇》が始まったこと…そんな中で、僕がメイク技術を修得し…《金魚》が街一番の女の子となり…冴嶋社長との出逢いもあって…詩織の《専属メイク》《サブマネージャー》である、今に至る…。
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