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北村と校舎の中に入る。私と北村は自然とあの教室に向かっていた。
ドアを開けると、みんながいる気がした。ギリギリ間に合った私を優しくむかえてくれるように。
私は雪花が座っていた席に座る。
「雪花はいつもここから北村を見てたんだ」
涙がこぼれた。私はこの教室が大好きだった。
卒業する時に、同窓会はやらないと決めた。
決められて会うのは嫌だったから、みんなで話し合って決めた。
「北村、私ね…」
北村が優しいまなざしで見る。変わらないなって思う。「もうすぐお母さんになるの」
「おめでとう」
にっこり笑って言う。
「いま何ヵ月?不思議だな、秋(あき)がお母さんになるなんて。秋は素敵なお母さんになるよ。俺はあの頃いつも秋に頼ってたし。生まれたら、赤ちゃんと一緒にこの場所に来てね」
私は頷く。
「いまはまだ3ヶ月。さっき病院で言われたの。嬉しくてここに来ちゃった。お腹の中で見てくれてるかな、この教室。北村ありがとね。来て良かった」
「…おじちゃんとか言われちゃうんだな」
と苦笑いする。
「屋上行かない?」
私がそう言って立ち上がろうとしたら、北村は「気をつけろよ」と言って手をさしのべた。
「ありがとう」
私は笑った。
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