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早紀が夏休み中に交通事故にあった、ということを始業式の日にクラスの担任の先生がホームルームで話した。
それまでざわざわしていたのが一瞬、水を打ったように静かになった。それから、「入院してるの?」、「怪我したの?」、「大丈夫?」、「今どうしてるの?」という疑問が矢継ぎ早に先生にぶつけられた。先生は、返答に窮して下を向いた。
体育会系の先生は質問には多少わからずとも、すぐに言葉を発するタイプなのに・・・、緊張がクラスを包む。また、静かになった。「実は・・・、植物状態で入院している」と発した先生の言葉は、意味を持った言葉なのに意味を持たないただの音のように聞こえた。先生は、交通事故にあいそのまま病院に運ばれまだ意識を取り戻さない、と事故に関して簡単に説明した。そして、面会はできない、よくなるかどうかもわからないと付け加えた。それ以上、質問する生徒は出てこなかった。
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