人間と魔族と恋心

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「それじゃあ改めて。僕はアレク、霧の村のアレク」 「……ルゥ。魔王四天王、アルラウネのルゥよ」 「そっか。よろしくねルゥ!」 そう言って隣に座り込むルゥに握手を求めるように右手を差し出す。 そんな僕をルゥは怪訝そうに見つめている。 はて、何か僕はまた恥ずかしい事を言ってしまったのだろうか。 「それだけ?」 「え、何が?」 「だ、だから!アタシ!魔王四天王!」 「そもそも魔王って何?」 「はぁ!?」 僕の発言にルゥはとても驚いたようで凄い大声で僕に聞き返してきた。 だけど僕もとても大きなルゥの声で驚いた。 「魔王様を知らないのアンタ!?どんだけ田舎者なのよ!」 「田舎者もなにも、僕は昨日グーリーに落とされるまではこの山から降りたこと無かったから」 この湖より先にある滝壺、その遥か上空から大量の水が溢れ出ている場所で多分山の下の方。 昨日グーリーに乗せてもらって分かったのは僕が住んでいる霧の村はかなり山の上の方にあるみたい。 僕が滝の方を指差すと、それを確認したルゥは大きな溜め息を付くのだった。 「…とんでもない田舎者ね。アンタとアタシが違う種族だってのぐらいは知っているでしょ?」 「僕が人間、ルゥが魔族だよね」 「そういう事よ。アタシ達魔族の一番上、一番偉いのが魔王様よ」 「ふーん、じゃあルゥはその四天王だから魔族の中でも結構偉いんだ」 「…そりゃね」 ルゥは嬉しそうな、それでいて少し悲しそうな顔をする。 何かあるのかな四天王っていうのも。 あれ? 「そういえば魔王四天王って言うけどルゥはどうしてこんな場所にいるの?」 「うっ…」 そして今度は確実に、ルゥはその目を下に落とすのだった。
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