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「ぐぇっ!?」
「あ」
カエルが潰される直前のような声がしたけれどこれは紛れもなく僕の口から発せられた声だ。
首の周りに、どこかで体験したことのある感触と匂いが巻きついていると言うか引っ張られているというか。
絞まってる絞まってる絞まってる絞まってる絞まってる絞まってる!首が!!
「キューちゃん、止めなさい」
「…きゅ、キュー…げほっ!」
前もって言いたいのは今のはキューちゃんの鳴き声ではなくて僕の声だ。
ルゥの言葉で僕の首周りに巻きついていた屈強なツタが緩む。
そのツタの先を辿ってみれば案の定の巨大食虫植物のキューちゃんがそのツタの一本をヒラヒラと振っているのだった。
そもそもキューちゃんは声を出せるのだろうか。
「……ルゥ、キューちゃんは何で今頃になって不意打ちをしようと」
「不意打ち?あぁ違う違う。キューちゃんはかなり怖がりで繊細だから。ほら、さっきグリフォンから解放されて真っ先に潜ったでしょ?だから多分その八つ当たりよ」
「さらっと言ったけど八つ当たりで首は絞めるものではないと思います」
「それは本人たちの間でなんとかしてよ」
ヒラヒラと手を振りながらルゥは関係ないと言い張る。
本人たちとは言え、この巨大食虫植物に意思疎通が出来るのだろうか。
いやいや待て待て僕、キューちゃんだって元々はルゥと一心同体なんだ。
つまりはルゥと同じで好きになれるかもしれない!
あまり自信が無いけど!
「あの、キューちゃん……え?」
「あっ、そういう事?」
意を決してキューちゃんと意思疎通を図ろうとして、何と驚くことに先にアプローチをかけたのはキューちゃんからでした。
その一本の屈強なツタを僕の目の前まで伸ばしてきたのです。
まるで握手を促すかのように。
「キューちゃんもアレクと友達になりたいみたいよ」
「えっ?う、うん!よろしくねキューちゃん!」
食虫植物でも思いのほか簡単に意思疎通が出来るもので。
伸ばされたツタの先端を手に見立てて僕はキューちゃんと握手を交わして。
デロッと、いやヌチャッと。
ツタの先端から吐き出された粘着質の物体が僕の右手のひら全体に広がって。
……え?いや、え?
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