人間と魔族と恋心

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風が、僕の頬の横を通り抜けました。 自然的なものではなく人為的なものなのを忘れてはいけない。この場合は魔族的なものか。 2秒、たった2秒前まで僕の顔の中心があった場所に1本のツタが伸びているのだ。 あ、いや違うヒジから伸びているから触手だ。 もちろん伸ばしたのはルゥ。 しかし、理由がてんで分からない。 「なっ、なななななななななななななななななな!?」 「えっと…ルゥ?」 「結局、そっち目的なのねアンタ!?」 「そ、そっちってどっち?うわっ!」 「避けるな!!」 「無茶言わないで!」 おかしい、とてもおかしい。いったい何が間違っていたのだろうか。 僕はただルゥにも触手があるのならそっちのアルラウネシロップも舐めてみたかっただけなのに、ルゥは顔を今まで以上に真っ赤にして僕を2本の触手と2本のツタを縦横無尽に振るって襲ってくるのだ。そりゃ見えるものは避けるけど。 しかし何がいけないのだろうか…考えろ僕、普段特に使わない頭で考えろ僕! 待てよ、今の僕の右手にはキューちゃんの触手から出たアルラウネシロップ… そうか!つまりルゥはキューちゃんのシロップと一緒にされて舐められるのが嫌なんだ! 昔、ミーナが作ってくれたパンをスープにひたして食べたら泣いて怒ったから今回もきっとそれだ! 「大丈夫だよルゥ!右手じゃなくて左手で良いから!!」 「……イヤアァァァァァァァァ!!」 違った!悪化した!キューちゃんと合体した! 悲鳴を上げながらルゥは跳びあがってかけつけたキューちゃんの大口にスッポリと下半身を埋めて空中で合体、アルラウネとして本気を出したルゥは20本のツタや触手を宙から僕に振り下ろしてくるのです。 くそっ!本当に何なのあの機動力のある食虫植物とルゥが怒っている原因は!? あれかな?食べ方とかかな!? 「大丈夫だよルゥ!僕はルゥの全部が好きだから!もちろん触手だって大好きさ!!」 「……やっぱりそっちの趣味なんじゃないの変態ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 はい違ったー! もっと悪化したよ!もう真っ赤通り過ぎて涙ぐんできたよルゥの赤い瞳が! けど泣きたいのは僕だって同じだよ! 「助けてー!助けてよグーリィ!早くここに来てぇぇぇぇぇ!!」 結果としては、ルゥが昨日怒った原因が分からないまま。また新しく怒らせてしまうのだった。
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