序章:始まりの日

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「……あいつに会った」 ぽつりと呟かれたタヤクの言葉に一瞬目を丸くし、「そっか」とだけ短く返す。 「なんて言ってた?」 「お前らを頼む、って」 その言葉に、マサアはにっかりと微笑った。 「あいつが一番大変なのになぁ」 「そうだな……」 炎の燃え盛る音が耳の中で暴れている。ごうごうと、それは全てのものを燃やし尽くすまで治まらないかのように。 「――行こう、タヤク」 いつの間にか顔を伏せていたタヤクの背をぱんっ、と叩き、マサアが促す。 その表情はいつになく引き締まったもので、いつも緩い顔をしている彼にはなんだか似合わないな、とそんなことを思ったタヤクだった。 勢い衰えることを知らない炎は、風に煽られどんどん燃やす範囲を広げていく。 タヤク達の場所まで届くのも時間の問題であった。 「あいつの代わりにおれらがちゃんと守ってやんないとなっ」 「お前は言われなくてもそのつもりだったろうに」 「あったりまえじゃん! おれの大事な家族だもんっ」 ふふん、とどこか誇らしげに鼻を鳴らしてタヤクに答える。 そして炎を背に、マサアは森の中へと走った。その後を追ってタヤクもすぐに駆けだす。 振り返ることはなかった。
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