1:邂逅

2/32
前へ
/840ページ
次へ
“鳥籠”。 その存在を一般の人々は知らない。 どこにあるのか、どういった施設なのか……そういったことを知らないのではない。 “鳥籠”そのもののことを、見たこともなければ聞いたことすらないのだ。 ケイヤ、マサア、タヤク、そしてキーナの四人は、その施設に“閉じ込められて”暮らしていた。 食事を運んでくる者と、彼らを“検査”する者、そして一人一人を“教育”する者が、外から中に入って出ていくだけである。 ケイヤ達は“教育者”以外の人物たちのことを、“飼育者”と呼んでいた。“教育者”がそう呼んでいたからだ。 ここにはいないもう一人の少女を含めて五人。 彼ら彼女らはそれぞれ別の“教育”を施され、何年も生きてきた。 そうしたある時に、ケイヤが言ったのだ。 『ここを逃げ出す』 その引き金になった出来事を、ケイヤは……思い出したくなかった。 そしていま、彼の言葉は実行に移され、深夜の逃亡劇が始まったのである。
/840ページ

最初のコメントを投稿しよう!

378人が本棚に入れています
本棚に追加