9人が本棚に入れています
本棚に追加
「帰って下さい。今、忙しいんですよ」
溜息混じりに吐き捨て、膝に手を当て立ち上がろうと腰を浮かせた時、唐突に女が口を開いた。
「暇でしょう。他殺の可能性を考えず、自殺と決め付けて動かない警察は」
酷く、冷たいその声に、今日で50歳の俺は鳥肌が立っているのを感じた。
いや、それより、彼女の今の言葉。
身に覚えがある。
仕切に鳴り響く脳内警鐘を引っ込め、恐る恐る問う。
「それは……、“OL飛び降り自殺”のことですか?」
「“飛び降り自殺”ではないですが、世間ではそう呼びますね」
彼女はつまらなそうに言い、弄んでいたボールペンをデスクに戻す。
最初のコメントを投稿しよう!