出頭

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 3週間前に起きた、“OL飛び降り自殺”  正に、今俺が後始末に追われている厄介事であった。  有り触れたようで有り触れていない。  何処が有り触れていない点かと言われれば、その異常性、OL5人が集団で会社の屋上から飛び降りたという点にある。  警視庁が、故人達は会社での業績が芳しく無く自殺する動機は充分にあり事件性は低い、と公表したせいで、今でもマスコミが騒いでいる。 「自殺でないとは、つまり?」 「他殺、ということです」  烏間榮ははっきりと言い切る。 「証拠があるのですか?」 「ええ」  彼女は微笑を湛えたまま頷くと、膝の上の小包をデスクに置く。 「……拝見しても?」  そっと彼女を窺うと、柔和に微笑みながら、言う。 「いいですが、その前に、もう一度言いますよ」  綺麗な人差し指を1本立て、顔をこちらに近付ける。  24年間引き連れた嫁がいるというのにも関わらず、心拍数が底上げを開始した。  彼女が綺麗だからか、はたまた別の意味でなのかは、わからないが。 「私は、これから人を殺します」
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