ー 第五幕 ー

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吉田 「まぁ、そうだろうね。取り敢えず、場所を変えようか?こんなところじゃ、落ち着いて話も出来ないだろう?着いておいで。」 普通ならば、『罠』を警戒すべきかも知れないが、葵の知る『栄太郎』は、そんなに『卑劣な男』ではなかった。 逡巡したが、大人しく着いて行くことにした。そんな素直な葵に、吉田は笑みを零していた。 ー京 某旅籠 一室ー 吉田 「どうしたの?取って喰ったりはしないから、座りなさい。」 昔と変わらぬ、柔和な笑顔で促され、葵は吉田の向かいに、おずおずと腰を下ろした。 葵 「……………単刀直入に、お聞き致します。この京で、何をなさるおつもりですか?」 吉田 「相変わらず、『駆け引き』は嫌いなんだね。葵のそう言うところが好きだよ?」 苦笑しつつも、そんなことを言う吉田。『掛け値』なしに、真っ直ぐ接する葵が、好きだったのだ。………そして、今でも……………。 吉田 「………それは、言えないよ?いくら、葵でもね。君は私より『左之助さん』を選ぶだろうし………。」 葵 「……………『松陰先生』のことですね。幕府が許せないのは、わからないでも、ありません……………。」  
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