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ーあの『芹沢粛正』も、『京都守護職』………つまり、『幕府』の命令だ。
新撰組に、あんな『共喰い』のような真似をさせる『幕府』に、葵が“悪感情”を抱かぬわけがない。
吉田
「………松陰先生は『仇討ち』なんか、望まないだろうね。でも、それだけじゃないし、もう、後戻りは出来ないんだよ。する気もないけれど。」
葵
「………栄太郎様………。葵が、『お願い』しても………ですか?」
葵の瞳は、涙で潤み、揺らいでいる。説得は無理なのだと、悟ってしまったからだ。
ー出来れば、死なせたくはなかったー
敵対するのは、わかっていた。もしもの時は、自分が殺す………その『覚悟』も、決めたはずなのに……………。
強引に唇を奪われたことはあったけれど、『思い出』の中の彼は、いつだって葵に優しかったから。
ー温かい『記憶』は、消せないー
涙を堪える葵に、吉田は困ったような笑みを浮かべ、静かに言葉を紡いだ。
吉田
「ごめんね、葵。本当は、葵の『お願い』なら、何だって聞いて上げたいけど、こればっかりは駄目なんだ。」
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