斥候の暗奔

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二つ目の説。 それは、”デルツが裏切り者ではないか”という可能性だ。 こちらの方が前者より現実的だ。 まず、合図をして二人を導いたところに魔術攻撃が来るようセッティングすることが出来る。 実際、あのとき廊下先を確認したのはデルツだけだ。 また、デルツが裏切り者ならば、ミズカとクイントゥラの二人を共に行動しながら幻覚系の術などで仲間の気配などを気付かせないようにすることは可能だ。 最も、クイントゥラは別にしてもミズカにはそういった類はあまり効果が無いはずである。 しかし、 (俺の身体も絶対って訳ではない。  それに、幻かは分からないが、デルツと合流したとき極僅かだが違和感を覚えたことは確かだ) ミズカは大講堂で合流したときのことを振り返る。 すぐに霧散してしまったが、少しとはいえ何かズレのような違和感を感じたのである。 もしかしたら、その時すでに何かしらの術中にあったのかもしれない。 合流した際、表層意識レベルでは警戒を続けていたミズカだが、知り合いと会ったことで無意識に油断が生まれていた可能性は十分にある。 講堂内はデルツ近くが蝋燭で照らされている以外は真っ暗だったし、細かい仕掛けならば見落としていてもおかしくはない。 よって、この説の方が濃厚なのは明らかだ。 だが、 (クイントゥラには、少しの間このことは口にしない方が良いな) そう思って彼女を見る。 「…」 震えていた。
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