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(それでも、相手が待ってくれるわけではない)
ミズカは、自失しているクイントゥラを強引に右腕で脇腹を抱くと、担ぐようにして持ち上げて自身の半身に寄せた。
「少し痛いかもしれないし、身分的にも相応しくない運び方だが我慢してくれ」
「…ぁぁ」
微かに擦れるような声で答えるクイントゥラ。
それを聞いて、そのまま走り出すミズカ。
道が分かるわけではないが、音などを頼りに進んでいく。
(とにかく、中央に人の気配をかなり多く感じる。
それをアテにするしかない)
危険を伴う判断だが、それでもこの場所に留まるよりはマシである。
なにより、人が多い場所に何かがある可能性が高く、このまま手を拱いている時間が惜しい状況。
(今は他に従者もいない以上、俺が彼女を守らなければ)
そう思いながら、暗闇の石畳を一人抱えているとは思えないほど軽快に俊足で走り抜けていく。
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